Virtual Water | STUDY POINT~高校授業編~

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1 / 水は人間の生命にとって最も重要なものです。人が生命を維持するためには,毎
日 2~3 リットルの水を飲む必要があります。水はまた,毎日の生活で他の多くの目
的のためにも使われます。調理や入浴,衣類の洗濯といった日々の活動に,人は水を
使います。平均して,1 日に約 300 リットルの水を使います。しかしこれは,人が直
接使う水だけです。
2 / 大量の水が,食料の生産にも使用されます。例えば,小麦 1 キロを生産するため
には 2,000 リットルの水が必要とされます。1 キロの鶏肉には,4,500 リットルの水
が必要とされます。さらに,1 キロの豚肉には 6,000 リットルの水が必要とされます。
1 キロの牛肉には,なんと 20,000 リットルです。私たちはこのような間接的な方法
で,かなり多くの水を使用しています。以上の数字から,穀物や家畜を育てるのには
大量の水が使われていることがわかります。ものを生産するために使われるこの水は
「仮想水」と呼ばれますが,これは私たちの目に見えないと思われるからです。人々
は,その用語を 1990 年代初頭から使用し始めました。



3 / 仮想水という概念では,海外から物資が輸入された場合,それらを生産するため
に使われた水もまた「輸入される」のです。この概念は研究において,どれだけの水
が他の国からある国へと移動しているのかということを測る「ものさし」として使わ
れています。仮想水の概念は,商品を生産するために使用される水の量だけでなく,
ある国々が水に関して他の国々に対してどれほど依存しているのかを私たちが理解す
る助けにもなるのです。
4 / 仮想水の見地から,日本に目を向けてみましょう。日本は世界平均の 2 倍の降水
量を誇り,真水に恵まれていることでよく知られています。日本人はきれいな水を簡
単に手に入れることができます。しかし日本人は,私たちが思う以上に他国からかな
り多くの仮想水に依存しています。地図 1 は,その食料の半分以上を輸入に頼ってい
る日本が,仮想水を大量に使用していることを示しています。食料品を生産するため
の水を考慮に入れれば,平均して日本人は 1 人当たり 1 日 3,000 リットルの水を使
っていることになります。これは世界平均の約 2 倍の量です。



5 / 地図 1(p.110)が示しているように,日本は主に食料のために,大量の水を他国
から輸入しています。真水に恵まれているはずの日本が,どうしてそれほど多くの水
を他国から受け取っているのでしょうか。それは,日本の食料自給率が近年低下し続
けているからです(図 1 参照)。現在では,他の多くの国々と比べて自給率はかなり低
いのです。
6 / 食習慣の変化が,その低下の一端を担っています。日本人は,50 年前と比べて,
たった半分の量しか米を食べていません。その代わりに,より多くのパンと麺を食べ
ています。小麦は,パンや麺はそれから作られるのですが,その大半が外国から輸入
されています。これら小麦製品の消費増加は,日本が小麦製品の供給においてより他
国に依存するようになることを意味します。
7 / 加えて,日本人は肉と乳製品も以前より多く消費しています。牛乳やチーズ,バ
ターといった食品を生産するには,かなりの水が必要とされます。肉を生産するのに
は,さらに多くの水が使われます。牛や豚のような家畜を育てるのには,長い時間が
かかります。そしてその餌を育てるのにもまた,たくさんの水が必要なのです。



8 / 日本は海外から,非常に多くの仮想水を輸入しています。おそらく日本における
仮想水の最も悪い点は,その使われ方です。スーパーマーケットやコンビニエンスス
トアで,多くの食品を目にするでしょう。しかし,そうした店で目にする食品の半分
以上が廃棄されていることを知っていましたか(図 2 参照)。日本は,多くの食品が
輸入され,売れず,そして捨てられている国なのです。こうした食品中の仮想水は,
完全に無駄にされています。
9 / 世界の人口増加に伴って,水の需要がますます増加してくるでしょう。20 世紀
の戦争の多くは,石油をめぐって争われました。専門家の中には,21 世紀には国々が
水をめぐって争うことになるだろうと言う者もいます。水をめぐって人々が争いあう
状況を食い止めるためには,水が共有しなければならない大切な資源であるというこ
とに私たちが気付くべきなのです。水を守るためには私たち一人一人に何ができるか
を深刻に考えなければならない時代に,私たちは生きているのです。



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