Snow Crystals─Winter’s Miracles of Beauty | STUDY POINT~高校授業編~

Snow Crystals─Winter’s Miracles of Beauty

PRO-VISION

Snow Crystals─Winter’s Miracles of Beauty








Part 1
寒い冬の日に雪が降っていることを想像してください.見上げると,空から何百万
もの小さな氷の彫刻が落ちてくるのが見えます.その彫刻,すなわち雪の結晶(雪片
とも呼ばれます)は,一つ一つはわずか数ミリの小さな芸術作品です.雪の中で遊ん
でいて,手のひらについたそのいくつかをよく見てみると,驚くほど複雑で美しい形
をしていることに気づきます.
上の写真を見てください.雪の結晶の例です.雪の結晶の中には,これらの写真の
ように,ほぼ完璧な対称形をしたものもあります.しかし,まったく同じ形の雪の結
晶は 2 つとありません.
19 世紀のアメリカの博物学者で作家のヘンリー・デイビッド・ソローは,このよう
な完璧な形をした氷の傑作の美しさを称賛しました.そして,このような星形の結晶
を生み出すとは,大気は「創造の才」にあふれているにちがいないと言いました.
もちろん,雪の結晶は設計図をもとにデザインされたわけでもありませんし,遺伝
子に基づいた生き物でもありません.それは,雲からこぼれ落ちた凍った水の小片に
すぎません.雪の結晶は,限りなく多様な美しい形をしています.では,いったいそ
れはどのようにしてできるのでしょうか.







Part 2
雪の結晶は,上空何千メートルもの雲の中で生まれます.まず,小さな水滴が凍り,
六角形の氷晶になります.それは,大きさが 0.01 ミリほどの「雪の結晶の赤ちゃん」
です.それから,この結晶に水蒸気がくっついて,より大きく重くなっていきます.
結晶は雲の中を落ちていくうちに,数ミリの大きさに成長します.結晶が生まれてか
ら地上に落ちるまで,1 時間ほどかかります.
単純な六角形から始まった雪の結晶は,唯一無二の形に成長します.形を決める主
な要因は 2 つあります.一つは雲の中の大気の温度です.温度に応じて,雪の結晶は
横に広がって板状になることもあるし,長く伸びて柱状になることもあります.もう
一つの要因は,まわりの水蒸気の量です.水蒸気が多ければ多いほど,結晶の形は複
雑になります.


Part 3
雪の結晶がどのように形成されるのかを解明するのに大きな貢献をしたのは,日本
の科学者,中谷宇吉郎でした.1932 年,彼は天然の雪の結晶を観察しはじめました.
雪の結晶の写真を約 3000 枚撮り,すべての主要なタイプに分類しました.それから,
どんな条件のもとでいろいろなタイプの結晶ができるのかを知るために,人工の雪の
結晶を作ることにしました.雪の結晶を作るのは,たやすいことではありませんでし
た.3 年にわたる懸命な取り組みの末に,中谷博士は独自の実験装置を開発しました.
この装置を用いて,室温を零下 30 度に設定した低温の実験室で実験を繰り返しました.
1936 年,ついに世界で初めて人工の雪の結晶をウサギの毛の上に作ることに成功しま
した.
温度と水蒸気の量を変えて,中谷博士はさまざまな種類の雪の結晶を作ることがで
きました.彼はその実験結果を図に表しました.それは「ナカヤ・ダイアグラム」と
して世界中に知られています.この図を見れば,どんな雪の結晶が,どんな条件のも
とで作られるのかがわかります.雪の結晶の形が,私たちに上空の状態を教えてくれ
るのです.中谷博士は「雪の結晶は,天から送られた手紙である」と言いました.







Part 4
雪の結晶の複雑で美しい形は,長い間,科学者を魅了してきました.彼らの研究の
おかげで,私たちは雪の結晶がどのようにできるのかがわかります.雪の結晶は,芸
術家や職人たちをも魅了してきました.雪の結晶に着想を得たデザインのモチーフが
美術工芸品に用いられるようになり,雪の結晶がもつ穏やかな上品さが,人びとの生
活に美しさを添えました.
日本では,1832 年に『雪華図説』と呼ばれる雪の結晶の図鑑が出版されました.江
戸時代後期には,雪の結晶の模様が人気になり,そうした模様は茶碗,皿,着物,浮
世絵に見られるようになりました.今日でも,そういう模様は宝飾品や衣類など,さ
まざまなものに使われています.雪の多い地域では,校章に雪の結晶のデザインを見
ることができます.
雪の結晶は,歴史を通して人びとの心を動かしてきました.おそらく雪の結晶の魅
力を一番うまく表現したのは,ウィルソン・ベントレーという名のアメリカの農夫で
雪の結晶の写真家でしょう.「顕微鏡を通して,私は雪の結晶が美の奇跡であることに
気づきました.一つ一つの結晶がデザインの傑作で,どのデザインも決して繰り返さ
れることはありませんでした.一つの雪の結晶が溶けると,そのデザインは永遠に失
われてしまいました.小さな美が一つ消え去ったのです.何の跡形も残さずに」
今度雪が降ったときには,じっくり観察して,そうした氷の傑作の美しさを味わっ
てください.ドアのすぐ外で,「美の奇跡」があなたを待っていますよ.

WINDOW 1
人工の雪の結晶の作成
中谷博士は,細いひもに雪の結晶を作ることができると考えました.ひもには木綿
や羊毛も含め,さまざまな素材を試しに使ってみましたが,最終的に,ウサギの毛を
使って成功しました.ウサギの毛の小さなこぶが,結晶の核の役割をしたのです.



Summary
Part 1
On a snowy day, you see millions of snow crystals falling from the sky. Each of them is a
small work of art with a complex and beautiful shape. Some snow crystals have almost
perfect symmetry, but there are no two snow crystals with exactly the same shape. Henry
David Thoreau said the air must be full of “creative genius” to produce such crystals. Snow
crystals come in an infinite variety of shapes, but how are they formed?

雪の降る日に,空から何百万もの雪の結晶が落ちてくるのが見えます.それらの一つ
一つは,複雑で美しい形をした小さな芸術作品です.雪の結晶の中には,ほぼ完璧な
対称形をしたものもあります.しかし,まったく同じ形をしたものは 2 つとありませ
ん.ヘンリー・デイビッド・ソローは,このような結晶を生み出すとは,大気は「創
造の才」にあふれているにちがいないと言いました.雪の結晶は,限りなく多様な形
をしていますが,いったいどのようにしてできるのでしょうか.







Part 2
Snow crystals are formed in clouds thousands of meters up in the sky. A tiny water droplet
freezes and becomes a six-sided ice crystal. Water vapor sticks to the crystal, and it gets
bigger and heavier. It falls to the earth about an hour later. Two main factors determine the
shape of snow crystals: air temperature in the clouds, and the amount of water vapor
surrounding the crystals.

雪の結晶は,上空何千メートルもの雲の中で生まれます.小さな水滴が凍り,六角形
の氷晶になります.この結晶に水蒸気がくっついて,より大きく重くなっていきます.
それから,約 1 時間かかって地上に到達します.雪の結晶の形を決める主な要因は 2
つあります.それらは,雲の中の大気の温度と雪の結晶のまわりの水蒸気の量です.



Part 3
Nakaya Ukichiro made a great contribution to finding out how snow crystals are formed. In
1932, he began observing snow crystals, and classified all the major types. In 1936, he
created the world’s first artificial snow crystal. By changing the temperatures and amounts of
water vapor, Dr. Nakaya produced many different kinds of snow crystals. The shapes of snow
crystals tell us about the conditions in the sky. “Snow crystals are letters from the sky,” said
Dr. Nakaya.

雪の結晶がどのように形成されるのかを解明するのに大きな貢献をしたのは,中谷宇
吉郎でした.1932 年,彼は天然の雪の結晶の観察を始め,すべての主要なタイプに分
類しました.1936 年,彼は世界で初めて人工の雪の結晶を作りました.温度と水蒸気
の量を変えて,中谷博士はさまざまな種類の雪の結晶を作りました.雪の結晶の形は,
私たちに上空の状態を教えてくれます.「雪の結晶は,天から送られた手紙である」と,
中谷博士は言いました.







Part 4
The beautiful shapes of snow crystals have fascinated artists and artisans as well as scientists
for a long time. In Japan, after the publication of Sekka Zusetsu, snow crystal patterns became
popular during the late Edo period. These patterns began to be seen on bowls, plates,
kimonos, and ukiyoe. Even today they appear on jewelry, clothes, and various other things.
The charm of snow crystals was best expressed by Wilson Bentley, an American farmer and
photographer of snow crystals. He said snow crystals were miracles of beauty.

雪の結晶の美しい形は,長い間,科学者だけでなく芸術家や職人たちを魅了してきま
した.日本では,『雪華図説』が出版された後,江戸時代後期に,雪の結晶の模様が人
気になりました.そうした模様は,茶碗,皿,着物,浮世絵に見られるようになりま
した.今日でも,そういう模様は,宝飾品や衣類のほか,さまざまなものに使われて
います.雪の結晶の魅力をいちばんうまく表現したのは,ウィルソン・ベントレーと
いう名のアメリカの農夫で雪の結晶の写真家でした.雪の結晶は美の奇跡であると,
彼は言いました.


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