Keisuke Iwaya and the Pursuit of Dreams
Lesson 2
岩谷圭介と夢の追求
Part 1
宇宙へ向けて風船が打ち上げられる。その風船には地球に向けられたカメラが付いている。
青い地球が漆黒の闇を背景に太陽の光の中で輝いている。シャッターが切られる。この宇宙
写真の撮影を行っているのは岩谷圭介である。このカメラによる高度3万メートルからの地
球の写真撮影が完了すると,風船は自動的に破裂し,カメラは地上に戻って来る。驚くべき
ことに,着陸時の衝撃を和らげるために使用されているパラシュートと緩衝材は両方とも手
作りで,その材料も地元のホームセンターから仕入れたものであった。
岩谷は次のように述べている。「実際,これまでは,この高度から鮮明な写真を撮ること
はできなかった。通常は写真撮影が不可能な高度である。ロケットからの撮影であれば,そ
れはさらに難しいだろう。」岩谷の特別な撮影方法と写真は異例のもので,周囲から広く関
心が寄せられた。
Part 2
岩谷は笑いながら語る。「子どもの頃,『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という映画
を見たが,その中にタイムマシーンを発明するブラウン博士という人物がいて,彼は私にと
ってヒーローのような存在だった。ブラウン博士は自分の興味・関心を追求することに全て
を捧げ,最初は不可能と思われたことも成し遂げていった。その部分が,ブラウン博士に私
がそれほど強く魅かれた理由である。」
大学在籍中のある日,岩谷は1本のニュース記事を偶然目にした。その内容は,アメリカ
の大学生がお手製の宇宙カメラで地球の写真を撮ったというものだった。岩谷が知って驚い
たのは,その学生らが大金も高度な技術も必要とせずにその偉業を成し遂げたということだ
った。また,彼らが使った資材は身の回りで入手できるものだけであった。岩谷は「私も同
じことを自分でやってみたい。」と思った。その時,風船カメラというものが,彼にとって,
映画に登場するタイムマシーンのような存在になった。
Part 3
岩谷は次々に風船を打ち上げ,データ収集と改良を繰り返し,次の結論に辿り着いた。す
なわち,使用する風船の直径は1~2メートルで,それを3万メートル以上まで打ち上げ,
少なくも成層圏に到達させることが最良の方法ということである。その高度であれば,大気
の干渉がほとんどなく,鮮明な画像が得られたのである。また,岩谷は,カメラが地上に戻
るスピードも計算した。というのも,着地点にある物に損傷を与えないよう,緩やかに降下
させる必要があったからだ。
岩谷は,11回目の試みで,ついに宇宙からの撮影に成功した。しかし,残念なことに,
全ての写真が不鮮明で実用性がないように見えた。彼は気を落としたが,写真をさらに細か
く確認し,その中の1枚だけが,鮮やかな青色をした地球を奇跡的に捉えているのを見つけ
た。岩谷はこの写真を見て,本当の喜びを感じ,さらに努力を続けていこうと意欲を高めた。
Part 4
「発明」とはしばしば大がかりなものだと思われている。実際には,岩谷は,身の周りで
手に入るものだけを利用して,自分の夢を追うことができた。写真撮影やカメラの回収がう
まく行かないこともあったかもしれないが,風船を打ち上げる度に必ず新しい発見があり,
どれも彼にとって有益なものであった。この点からすると,彼の試行は,実際にはどれ1つ
として「失敗」ではなかったのである。
岩谷のメッセージは分かりやすい。「成功するためには繰り返し考え(続け)ることが必
要であり,諦めないことも重要だ。世の人たちに夢は叶うものだと知って欲しいし,夢を追
求する若者が増えて欲しいとも思う。」
岩谷はすでに次の計画に着手している。深海の写真撮影である。彼は今後も永く努力を続
けていくだろう。
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