Emma’s Saturday
エマは 10 時ごろにやっと目を覚ましました。太陽は窓越しに輝いていました。天
気のいい土曜日の朝でした。彼女が下の階に行くと,父が待っていました。
「誕生日おめでとう,エマ」と父は言いました。彼の顔には満面の笑みが浮かんで
いました。エマは微笑みを返しませんでした。
「16 歳になった気分はどうだい」と父はたずねました。エマは答えませんでした。
「とにかく,お前はいつでも私のかわいい娘だよ」と彼は言いました。それから彼は
彼女にプレゼントを渡しました。それはキットセンズというとても高価な店の袋の中
に入っていました。エマは袋の中をのぞきこみました。「ありがとう」と彼女は言いま
したが,その声は冷たいものでした。なんとなく彼女は父のプレゼントが気に入らな
いだろうとわかっていました。
「さあ,それを開けてみて!」と父は言いました。
「お昼ごはんの後で開けるわ」
「エマ!」
「わかった,わかった。開けるわ!」と,彼女は言いました。
プレゼントはセーターでした。エマは依然として微笑みませんでした。
「どうしたんだい。気に入らないのかい」と父はたずねました。
「お父さん,これ,ピンクよ」
「ピンクは女の子にとって申し分ない色じゃないか。お母さんもピンクが大好きだ
よ」
「だったら私はそれをお母さんにあげるわ」とエマは言いました。
「何だって」
「学校にピンクのセーターなんて着ていけないのよ,お父さん。みんなが私のこと
を笑うわ。私のイメージは絶対ピンクじゃないわ」
「じゃあキットセンズにそれを返品しなさい」と父は冷たく言いました。「それを
自分のイメージにぴったりの物と交換しなさい」
「お父さんは私のことを全然わかっていないわ!」とエマは叫びました。そして彼
女は自分の部屋に走って戻りました。彼女は携帯電話を取ってトッドに電話をかけま
した。トッドは彼女の新しいボーイフレンドでした。
エマとトッドはキットセンズの前に到着しました。彼女は自分の大きなハンドバッ
グに入れてセーターを持っていました。「さあ,これを交換しましょう。実際に私が着
られる物が欲しいわ」と彼女は言いました。
「君ひとりでやるんだよ,エマ。僕は自分の買い物があるから。45 分後にここに戻
ってくるよ,いいね」とトッドは言いました。
エマは驚いていて,あまりうれしくない様子でした。「自分の買い物ですって。ど
んな買い物なの」と彼女はたずねました。
「まあ,大したことじゃないよ」
「トッド,今から私の誕生日プレゼントの買い物をし始めるつもりなの」
「ええと,実は…」
「信じられないわ。私の誕生日を忘れていたのね」
「忘れていないよ。ずっととてもとても忙しかっただけだよ」
「すばらしいわ!たった 45 分で何かすてきな物を見つけられると本当に思ってい
るのね」とエマはたずねました。彼女はかなり怒っていました。
「たぶん」
「たぶんだって!」エマは大声で言いました。「わかったわ,あなたが何を私に買
ったってかまわないわ。45 分後にここに戻ってくるわ。ちょうどその正面扉を入った
所で会いましょう」
トッドは立ち去りました。エマはキットセンズの中に入って行きました。彼女は自
分の大きなハンドバッグからセーターを取り出しました。それから彼女は店のセータ
ーのセクションを探し始めました。しかし,突然彼女はトッドに言いたかったことを
思いつきました。彼女は彼を見つけるために店から走って外に戻りました。しかし,
彼女がちょうど外に出たとき,大きな男性が彼女を止めました。彼は彼女の左腕をつ
かんで離さなかったのです。
「お嬢さん,ちょっと待ちなさい」とその男性は言いました。「君は自分が何をして
いると思ってるんだい。とても高価なセーターを盗もうとしているんだよ!君はそん
なことが原因で刑務所行きになるんだよ。私は君を店長に報告するよ。一緒に行こう」
エマが何かを言う間もなく,その男性は彼女をキットセンズの中に引き戻しました。
「誰か店長を呼んでくれ!」とその男性は叫びました。店長が到着し,その男性は
状況を説明しました。
「いいですか,私は彼女がこのセーターを持って店を出るのを見たのです。明らか
に彼女は代金を払っていません。キットセンズの袋にさえ入っていないのです」と彼
は言いました。
「おじさん,放してちょうだい」とエマは冷たく言いました。「痛い」その男性はや
っとエマの腕を放しました。
「お嬢さん,君はとても悪いことをやったのだよ」と店長は言いました。「君のお父
さんは,これまでに物を盗まないように君に教えなかったのかい。私はすぐに君のお
父さんに電話をかけるよ。それともまず警察に電話するほうがいいのかい」
「この人は大きな間違いを犯しているわ」と彼女は店長に言いました。「あなたは断
然,警察に電話すべきだと思うわ。それと私のお父さんは弁護士よ。お父さんにも電
話して」
それからエマはその男性を見ました。「おじさん,かなり困ったことになるわよ」と
彼女は言いました。男性は突然とてもまごまごした様子になりました。
エマは自分のハンドバッグに手を伸ばしました。彼女はセーターのレシートを取り
出しました。
「ほら。これを見て」と彼女は店長に言いました。「私の父が昨日私にセーターを
買ってくれたの。私はそれを何か他のものと交換するためにそれを持って来ただけよ。
それってそんなに大きな犯罪なの」
店長とその男性は注意深くそのレシートを見ました。それから彼らはエマを見まし
た。そのあと彼らは再びレシートを見ました。
そして,店長はとても静かに話しました。彼はその男性に「私はあなたがマズい間
違いをしでかしたと思います」と言いました。
「でも私は彼女がそれを盗んでいると思ったのだよ」とその男性は答えました。
「あなたは私の腕をケガさせたのよ」とエマは言いました。「私の腕は本当に痛い
のよ。ほら!ここがすっかり赤くなっているわ。肩も痛いわ。お父さんがこれを理由
にあなたを裁判所に連れて行くでしょうね。あなたは大金を払わなくちゃいけないで
しょうね。大金よ。それにあなたの名前が新聞に載るでしょうね」
「待ってくれ!それは困る!頼むから!」とその男性は言いました。「本当に申し
訳ない。どうしたらいい」
「わからないわ」とエマは言いました。「お父さんに電話をかけて,聞いてもいい
けど。お父さんならどうしたらいいかをあなたにきっと言ってくれるわ」
「いや,待ってくれ。ほら,このセーターの値段はいくらかな」
「119 ドル 95 セントです」と店長は言いました。
「わかった,これでどうだい」とその男性はたずねました。「君に 120 ドルを差し
上げよう。ということですっかり全部忘れよう。いいね」
「わからないわ。お父さんには電話をかけなきゃいけないと思うわ」
「とりあえずそのお金を受け取ったらどうだい」と店長は提案しました。
「ええ…いいわ」とエマは言いました。
男性は彼女にお金を渡して,すぐに立ち去りました。店長はエマに「君のお父さん
は本当に弁護士なの」とたずねました。
「お父さんはバスを運転しているわ」とエマは言いました。そして彼女は再びセー
ター売り場を探しに立ち去りました。
トッドがキットセンズに戻ってきました。店内,正面扉近くには大勢の人がいまし
た。いくつかの特売のテーブルに行き着こうと,人々はお互いを押し合っていました。
その時トッドはエマを見ました。
「信じないでしょうけど」と彼女はすぐさま彼に言いました。「私,あのピンクの
セーターを盗んでいると思われたの。それで私は 120 ドルを手に入れたの,それでね
…」
ちょうどその時,群衆が彼らの方に向かって来たのです。一人の若い女性が激しく
エマの方に突き進んできました。そして彼女はエマの足を踏みました。それから彼女
は何も言わずにただすばやく歩き去りました。
「あっ,痛い!もっと注意しなさいよ!」とエマは叫びました。その若い女性は振
り返りませんでした。
「おい,エマ!」とトッドは言いました。「君のハンドバッグが開いているよ。た
ぶん彼女は何かを取ったんだよ」
「大変!私の 120 ドル!」とエマは言いました。彼女はすぐにバッグの中を調べま
した。お金はまだそこにありました。「いいえ,大丈夫よ。今もあるわ…いいえ,待っ
て!携帯電話がないわ!ここにないわ!彼女は私の携帯電話を盗んだにちがいない
わ!」
「君はここで待ってて。僕が彼女を捕まえるよ」とトッドは言いました。彼はその
若い女性のあとを追いかけて走り出しました。彼がその女性を見つけたとき,彼女は
手に携帯電話を持っていました。
「それを僕に渡せ!」と彼は言いました。
「何よ!」とその女性はたずねました。
「僕にその携帯電話を渡せ!」
「いやよ!」と彼女は言いました。
「いいや!それを今すぐ僕に渡せ!僕になぐられたいのか。なぐるぞ!」トッドは
とても怒った声で話しました。彼は彼女の手から電話を奪いました。
彼は立ち去りながら,「僕が警察に電話しなくて君は運がいいね」と言いました。
しかしその女性は彼の言うことを聞いていませんでした。彼女は手で顔を覆っていま
した。彼女は泣いていました。
「ほら」とトッドは電話をエマのハンドバッグに入れるときに言いました。「それ
と,そのカバンを閉じておいてね」
エマはトッドがとてもすばらしいと思いました。「彼ってこれまでで最高のボーイフ
レンドだわ」と彼女は独り言を言いました。
「トッド,もう家に帰らなきゃいけないの」と彼女は彼に言いました。「今日あとで
もう一度会えるかな」
「もちろんだよ」とトッドは答えました。「どうして家に帰らなきゃいけないんだい」
「お父さんに話したいからよ」と彼女は答えました。
エマは帰宅すると,台所に父がいるのを見つけました。
「お父さん,信じないだろうけど。私ね…」と彼女は言いました。そして彼女は父
が携帯電話を持っていることに気づきました。それは彼女自身の電話とまさにそっく
りでした。
「エマ,私はお前の携帯電話に電話をかけようとしたんだよ」と彼女の父は彼女に
言いました。「お前に帰り道に牛乳を買ってきてもらいたくって。そしたらそれが鳴る
のが聞こえたんだ。それはお前の部屋にあったよ。ベッドの上にね。きっと持って出
るのを忘れたんだね」
エマはその携帯電話を見ました。それは実際,彼女の本物の電話でした。「今からど
うしたらいいの」と彼女は思いました。もう 1 つの電話を彼女はどうすべきでしょう
か。それは彼女の電話とまさにそっくりでした。彼女は全くわかりませんでした。し
かし彼女はこのとても面白い土曜日のことについてトッドに話すことを心待ちにした
のです。
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