A Small Grain with a Big Impact | STUDY POINT~高校授業編~

A Small Grain with a Big Impact

FLEXⅡ

A Small Grain with a Big Impact




Part 1
おそらく大部分の人が塩は単なる調理材料と考えているであろうが,実際は,それをはる
かに上回る存在である。塩は,何千年にも渡り,人間社会にとって大変重要なものであった。
今日は,塩が私たちの社会に与えた歴史的・文化的影響の一部について学習する。
塩は私たちの生活になくてはならないものである。塩がなければ,私たちの体は化学的に
不均衡な状態となり,筋肉や神経系が正常に機能しなくなる。私たちは塩なしでは生きてい
けないのである。
古代の人間は自分たちで狩った野生動物の肉から塩を得ていた。しかし,農業が発達する
につれ,人間は,穀物や野菜といった塩分量の少ない食物を摂取することが増え始めた。こ
のことで塩の需要が高まったが,多くの人にとって塩は簡単には手に入るものではなく,貴
重な貿易品目になった。
実際に,それが支払い方法の1つとして使われている地域もあるほど,塩は大変価値のあ
るものであった。古代エチオピアでは塩が貨幣として使われており,この慣習は20世紀ま
で続いていた。ローマ兵は,報酬の一部として「サラリウム・アルゲントゥム(塩の貨幣)」
を与えられた。これは,英単語の「salary(給料)」の語源となったものである。



Part 2
塩は別の点においても貴重なものであった。古代の人々による塩に関するある発見は,人
間社会に大きな変化をもたらした。その発見とは,塩には食物の保存効果があるというもの
であった。
この発見のおかげで,古代の人々は飢饉を切り抜けることができた。というのも,深刻な
食料不足の際,人々がそれを乗り越えるのに塩が役に立ったからである。塩を用いた食物の
保存は,少なくとも古代エジプトにさかのぼる。エジプト人は魚や肉を塩で保存し,干ばつ
に備えていた,と言われている。
このように食物が保存できることには別の利点もあった。すなわち,これにより,長距離
の旅行[移動]が可能になったのである。大航海時代には,ヨーロッパの多くの探検家たち
が,新大陸(南北アメリカ)を目指し,航海に出た。しかし,このような目的地は,到着ま
で何ヶ月もかかるほど遠く離れていた。そしてこの長い航海中に探検家たちを支えたのが塩
であった。彼らは塩漬けの魚や肉を食べることで厳しい航海を乗り切ったのである。このよ
うな食料がなければ,探検家たちがそのような遠方の地へ辿り着くことはできなかっただろ
う。



Part 3
古代の人々は塩は大変重要であると理解しており,現代文化はこの影響を受けている。
「to be worth one’s salt」や「worth one’s weight in salt」という表現は今日でも見られる
ものであるが,これらは,役に立つ人物や大変貴重な人物を表す際に使われる。
塩にまつわる興味深い古い慣習がある。欧米諸国の中には,塩をこぼすのは不吉なことで
あると考えているところもあり,現在でも,塩をこぼした時には左肩に塩を振り掛ける人が
いる。このような人たちは,その塩が背後にいる悪霊をおどして追い払うと信じている。も
ちろん,この迷信は割り引いて聞くべきであるが。[この迷信の信憑性は低いが。]
宗教においては,塩が与えた文化的影響の別の例を見ることができる。(例えば)ローマ・
カトリック教会の儀式では塩が使われ,神道においても,諸悪を取り除き土地を清めるため
に塩を用いる。(また)相撲の力士は,現在でも,一握りの塩を掴み,土俵入りする前に,
そこに投げ入れる。(このように)塩は多くの文化の一部となっている。



Part 4
現代科学により人々の生活様式が変化するにつれ,塩の役割も変わり始めた。缶詰め製造
法や冷蔵庫というものの出現により,保存料としての塩の重要性が薄まり始めたのである。
その一方で,塩の新しい使用法が科学者によって発見された。その発見の1つは,塩がそ
の構成元素のナトリウムと塩素に分解できるというものである。これらの元素と他の物質を
用いて,人々は漂白剤や人工ゴム等を製造し始めた。現在塩は新しい役割を担っているので
ある。
今日,塩は安価で一般的な日用品となった。塩は現在,世界のどこでも手に入るが,それ
は人間社会において常に重要な役割を果たしてきた。だから,あなたが次に塩入れを手に取
る時,次のことを覚えておきたいと思うかもしれない。すなわち,現在あるこの世界を作り
上げたのは塩かもしれない,ということを。


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